Mixにおける“距離感”について

何もしなければ、単に音量バランスを調整しただけでは、全ての楽器が横並びしているような平面的サウンドになってしまいます。

  1. 音の大きさ、リヴァーブ音、音質、トランジェント
  2. この4つの要素が絡み合うことで
  3. Mix上、オーディオにおける距離感、空間感が決定する。

[ 目次 ]

・音楽との距離感

・距離感の三つの要因

・第四の刺客、"Transient"

・現代のレコーディングの都合

・オーディオは平面的

・距離感を生み出そう!



音楽との距離感。

ステレオオーディオというものは、二本のスピーカを用いて音響空間を再現する技術です。

左、真ん中、右という左右の広がりのうち、楽器をどこに配置するか?ということ

(Panning)はMix上に置いて基本的かつ重要な作業です。


しかし、そうした単純な左右だけでなく“奥行き”というものも

MIXにおける空間感を構築する重要な要素です。



ではMixにおける距離感とはどういうことなのでしょうか?

どのように生み出されるのでしょうか?



距離感の三つの要因。

  • 音の大きさ
  • リバーブ、残響音
  • 音の周波数バランス

距離感を表す、最も大きな要因は“音の大きさ”です。

単純に音の大きいものは近くに聞こえますし、また小さい音は遠くに聞こえます。

これが大原則ですが、当然楽器によってその音の大きさは異なります。


Mixにおいては電気的な操作で自由に変えられてしまいますが、

生楽器に関してはその楽器固有の音の大きさがあるということです。

例えばギターの思い切り掻き鳴らした音と、

生ピアノの普通に弾いた音ではどちらが大きいでしょうか?

バイオリンをソロで思いっきり弾いた音と

オーケストラ全体が小さく演奏した音ではどうでしょうか?

重要になってくるのは、楽器それぞれの特性を見極めることだと思います。

そしてMixの場合では基本的には大事な楽器ほどバランスが大きくなりえますので

そういう面でも音楽的な判断が大切です。


次に大事なのはリバーブ、残響音の大きさ(その音とリバーブ音のバランス)です。 

音に対してリバーブの割合が大きければ それだけリスナーに対する距離感が増します。

少なければそれだけ近くにいるのだろう、ということになります。


そして音色です。 距離が離れれば、それだけ空気の層を通るわけで音質変化が発生します。


つまり、これらをまとめると・・・

音がよりはっきりしていて、音量が大きく、リバーブが少なければ近くに
音が丸みを帯びていて、音量が小さく、リバーブが多ければ遠くに

(細かい音量差については、その楽器そのものの音量による。)

ということになります。


生楽器の処理については以上のように言えると思います。

以上の3つの要因が、音の距離感というものを人間に感じさせる基本的なものです。



第四の刺客。"Transient"

しかしそれ以外の要因もあります。

それはTransient(トランジェント)と言うものです。


Transientと言うのは現状、日本語で適切な訳語が無いので、説明が難しいですが、

音の輪郭において重要な役割を果たす音成分です。

それは音の鳴る瞬間、エンベロープで言えばアタックの部分にあたりますが、

音の出るその時に瞬間的に発せられる一種の瞬間的ノイズとでも言いましょうか。 


これはつまりは実際の音程にかかわる“実音”とは切り離された

装飾的な要素とも言えますが、しかし重要です。


具体的にはギターをピックで引いた時になる、カツッ!という音や 

ピアノのハンマーが当たった瞬間のギャンっという音、

スネアの皮とスティッチが当たった瞬間のバチン、 

という皮鳴りのような非常に瞬間的な音なのです。 


音における輪郭を司る部分でコンマ何秒という長さですが、

音の認識に、聞こえ方に大きな影響与えるわけです。



そして、この部分が多いか少ないかで、距離感が大きく変わるということです。

現在のデジタルレコーディングにおいてはTransientのような非常に小さく瞬間的な音も、

逃すことなくクリアに録音できますので、そういった意味では確かにより生音に近いわけです。


しかし現実的なMixにおいては、それが逆に距離感に不利益をもたらすこともあります。

(場合によっては耳障りな音になったりします。) 


つまりどういうことかと言うとTransientが多すぎると、 

たとえリバーブが多く、音量が小さくしても、 

近くで鳴っているような聴覚上の心理効果をもたらしてししまうということです。 


Transientは小さく瞬間的な音になりますので、距離が離れるだけ実音以上に飛散してしまいます。

なのでミックス上、遠くになっているのにもかかわらず、

そうしたものが多く聞こえてしまうと 不自然に聞こえてしまうわけです。 


そこで場合によっては音の処理としてTransientを抑えたほうがよいこともあります。

逆により近くで音が鳴っているようにしたい場合には

Transient強調すると コンプレッサーを強くかける場合よりも効果的な場合があります。 

(Transientを操作できるエフェクター類はそのように使います。)



現代のレコーディングの都合。

距離が離れていると言う事はそれだけ空気の層を多く通っていると言うことであり、 

音の楽器を本来の音とはある意味では変化して聞こえてくるわけです。 

それはTransientだけではなく、その生楽器の音色としてもという事です。

しかし生楽器とは本来そうした自然な“距離”というものを考慮したうえで、

離れた距離で聞いたときに、

その部屋全体残響、音色変化が複合的に絡み合い、

それらを総合的に聴いたときに よく聞こえるように設計されているものであり、

そうあるべきものなので、Mixの操作も基本的にはそれに沿うべきでしょうね。 

(生楽器中心の音楽は特に)


なぜデジタルでクリアに取れて生音に近いはずなのに、問題が生じるのか? 

ということについては マイクの性能の問題と録り方が引き起こすのだと思います。 


通常現代の多くのレコーディングではオンマイクでの録音が中心になります。 


ギターのサウンドホールに耳をあてて、聞く人はいませんしうるさいだけです。 

しかし現実にはレコーディングの都合上の楽器に

マイクを近づけて収録すると言う事が多いわけです。

(腕利きのエンジニアはオフマイクで録った音と組み合わせることで

自然なアンビエントを得たりするようです。)


マイクで音を取ることと耳で聴く、とはもちろん違いますがマルチトラックレコーディングというものは、生楽器による音楽本来の距離感を損ねてしまう恐れがあるので注意する必要があるのです。 



オーディオは平面的である

そしてそもそもオーディオという技術自体に問題がないわけではありません。

特にステレオオーディオは二本のスピーカしかないし、

そしてスピーカというもの再生能力は物理的に限界があります。

あくまでオーディオとしての音しか出せないわけです。


オーディオはオーディオとしての特性と限界があるので

それを見極め、利用する必要があるということだと思います。


録った音をただ音量だけ調節し、左右に並べたとしても

平坦に感じてしまうのはこのことが要因です。

例え、いいマイクで録ったとしてもです。


遠近法は人間の錯覚を利用して、平面上(紙、キャンバス等)に

三次元空間を作り出す技術だと思いますが、

(絵には詳しくないので間違ってたらすいません。)

オーディオにおいてもそれに近い、人間の錯覚を利用するような

工夫が必要だということです。


Transientもそうですが、コンプを使って、前後の位置を固定する

というテクニックもあります。


そこらへんについてはコチラの記事で触れています。



距離感を生み出そう!

つまり生楽器中心ではない音楽に関してはこの限りではないといえそうですが

距離感、空間感をうまく作っていくことで

各パートの視認性?(聞き分けられるかどうか)はあがるので

そうした音楽でも以上のような方法は応用できるわけです。

というかテクノ、ヒップホップなどのエレクトロな音楽

よりこうした距離感を強調したほうがより“らしく” なると思います。


ドラムはドライでシンセ類は深いリバーヴで、みたいな。


以上ですが、ありえない距離感や空間感を持つサウンドをMixで作り上げる

というパターンもあるにしても、あくまで基本としては物理的な法則に沿った、

音造りがステレオ・オーディオにおける適切な距離感というもの生み出す、

という事になります。 



miur-us Logには、音楽制作に関する様々な記事があります!ぜひ!



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