"DTM"の終焉について。本当に自宅が“スタジオ”になった日。


"DTM"という言葉は、もはや死語かもしれません。

というよりは“打ち込み系”という区別をする必要すらない時代なのかもしれません。

コンピュータと音楽制作をめぐる、現在の状況について考えてみました。



むしろコンピュータでの音楽制作が主流。

ある意味では、もう"DTM"というものは存在し得ないのかもしれません。 

それはコンピュータを使った音楽制作というものが、もはや主流であり、規模などを除けば、

理論上プロとアマの差というものが、ほぼなくなったからです。(現実的にはありますが。)



もともと"DTM"とは家庭向けのパソコンを利用した、ホビー(趣味)です。

早い段階(80年代)から一部のプロは、コンピュータによる音楽制作に目をつけていました。

しかし当時は発展途上の技術であり、それがここ十年くらいで一気に変わったのだと思います。

シンセサイザー、あるいはシーケンサーなどの機械をつかった音楽とは、区別して考えています。ここでは、あくまでコンピュータ本体を使用しての音楽製作を指します。

楽器、あるいはそれを操るミュージシャンを主体に音楽はもちろん依然としてありますし、ふたつのスタイルが混在した音楽も存在しています。その境目は、年々薄くなっているように思いますし、DTMスタイルが生んだ"EDM"というジャンルが(EDMがジャンルなのかについては一考の余地アリと自分は考えていますが)今やメインストリームになっているともいえなくないです。


別に悲劇的なことではなくて、わざわざ"DTM"として区別する必要がなくなってしまった、と。

でもそれは時代の流れによる、自然な現象であると捉えるべきだと思います。

例えば初音ミクがDTMを殺した、という説もありますが、果たしてそうでしょうか?



Youtubeでこのような動画を見つけました。 

1988年の海外のテレビ番組?で、“コンピュータを利用する音楽制作”を取り扱っています。 

内容を要約すると、自宅がスタジオになる、ミュージシャンに気兼ねすることもない!

スゴイ時代になったもんだ!みたいな話です。


ところで"DTM"というのは、日本のみの造語のようですね。

でもここでは、海外におけるコンピュータでの音楽制作も"DTM"とします。


コンピュータで自宅をスタジオに!!というのが、"DTM"の根源となる思想だと思います。

しかし、まずそもそもの流れとしては、家庭用コンピュータの普及があってのものです。 


この動画に出てくる、少し分厚いキーボードこそが

『コモドール64』という世界における、最も普及した家庭用コンピュータです。 

ブラウン管テレビをディスプレイとして使っています。



コンピュータの家庭への普及のはじまり

80年代から、このコモドール64だけでなく、家庭向けのコンピュータが多く発売されるようになり、 

それを仕事だけでなく、ゲームや趣味に使う、という流れが生まれてます。この流れ大事!

それが"DTM"という文化を生み出すだけではなく、今日のコンピュータでの音楽制作の源流を生み出したわけです。DAWソフトである、"Cubase"ATARI STというホビーパソコンでの"Pro 24"というシーケンサーソフトが元になっています。


当時の状況としては(80年代)、コモドールは内蔵音源がありますが、他のコンピュータでまともに音を出したいなら、各自、別にサウンドカードを用意したり、MIDI音源をつないでゲーム側で設定して、ゲーム内の音楽をその音源を通してリアルタイムで鳴らす、という場合もありました。

今となっては、ただただめんどくさいだけかもしれません。まぁ自分もYoutubeなどネットで調べただけで、もちろん実体験はしてないですが、でも逆に熱い時代だったようにも思えますね。ゲーム用に音源を用意するなど豪華に思えますが、当時はCD自体も普及し始めたころで、そういうレヴェルだったようです。


コンピュータがより現実的に使い物になりだすのは、Windows95を起点とした、2000年以降だと思います。 それは、コンピュータで何でもできるんだというダイナブック構想の現実化です。

"ダイナブックとは、GUIを搭載したA4サイズ程度の片手で持てるような小型のコンピュータで、子供に与えても問題ない低価格なものである。同時に、文字のほか映像、音声も扱うことができ、それを用いる人間の思考能力を高める存在であるとした。"
(wikipedia"ダイナブック"より引用)

これはつまり、iPad等のタブレットそのものなんです。画像見るとホントにそのまま。



いまや手の平サイズのコンピュータ

つまり、今現在コンピュータをめぐる環境がどうなったかは言うまでもありません。

家庭に一台どころか、スマホという形で一人一台という時代になってしまいました。


そして、それはこうした時代の家庭用コンピュータをはるかに凌ぐ性能です。

これって良く考えればすごいことだと思うんです。

空とぶ車は実現しそうにありませんが、近未来に生きてますよ、僕ら。

それが当たり前になってしまって意識することはありませんが。



誇大表現ではなくなってしまった!

言ってしまえばDTMにおける、『自宅がスタジオになる!ミュージシャンもいらない!』 というのは、ひとつの夢物語であり、キャッチコピーに過ぎない部分もあったと思います。

上の動画を見てもわかりますが、そのサウンドは、生の楽器と比べたら、かなりチープなものです。

もちろんそれはそれで、ひとつのスタイルになり得るわけですが。

MIDI(Musical Instrument Digital Interface)を通して、外部シンセサイザーは鳴らせましたし、そういうスタイルで作品を作っていた人たちはいたにせよ、あくまで"代用"というスタイルであり、やはり大規模なスタジオで作りこまれた音楽が主流だったのではと思います。


プロ用のコンピュータによる音楽制作ツールとしては、やはりPro Toolsだと思いますが、

radio headの『OKコンピュータ』に使われたのが97年なので、

ここを節目に、やはりこの20年で一気に変わったのだ、と思います。



ものすごいスピードでの進化

特にこの7,8年でしょうか。デジタルによる音楽制作は急速に進歩しました。

特にソフトがですね、どんどん進歩して来ました。DAW、ソフトシンセやプラグインなど。 

その結果、音響の問題(遮音性、音響特性、スピーカー)を度外視すれば自宅であっても、プロ級のサウンドが、安くはないが非現実的ではない費用で生み出せるようになってしまったわけです。

日本の住環境だとなかなか難しいですが、しかし間違いなくコストはとんでもなく安くなってます。 


もちろん技術、知識は必要ですけどね。 

しかし、それも海外などでは既にネットを通じ、ミキシング等を学べる手段はかなりあります。

DTMは、あくまで傍流の存在であり、趣味の世界でした。

もちろん現在でも趣味としての音楽制作はあるわけで、そこは変わりません。

しかし、事実上、わざわざ分ける必要がなくなってしまったわけですからね。

スマホですら音楽制作できてしまう時代です。手のひらミュージックですね。


そうした状況では、もう別に自宅がホントにスタジオをであり、 

一日中、作ってはいられるわけですし、ミュージシャンは逆に何をすべきか?

という話にもなってきますね。 曲を作ったら、その日のうちに、それなりに試聴に耐え得る音源が 自宅で出来てしまうわけですからね。 



“宅録”という言葉も死語になる?

コンピュータが発展途上の中でも、安価なMTR自体は存在し、実際にMTRで作った音源を作品として発表するミュージシャン達もいたわけです。世界でも日本でも。ラヴ・サイケデリコのデビューアルバムもMTRでの宅録、と聞いたことがあります。

むしろ90年代までは、廉価MTRの方がミュージシャンにとって親しみのあるものだったわけです。

逆に今でも、パソコンを嫌いMTRを使いたい人たちがいて、TASCAMから新しいMTRが発表されたり

しましたね。

TASCAMのカセットテープであったりMDを使ったMTRが、自分が10代の頃はギリギリ存在しえたので、振り返ってみると感慨深いですね。結局その類のものは自分は買わなかったですが。


プロフェッショナルな録音と比べれば、音は当然しょぼいんですが、それはそれでDIY精神あふれるいい意味でのローファイ感、チープ感であったと思います。今となっては、ノスタルジーかもしれません。今あえて、求められるサウンドではないように思います。

宅録であっても、それなりの音質が求められるような時代になったんじゃないかと。(個人の考えです。)

なおアメリカのトップチャートの中には、iPhoneとiRigというインターフェイスだけを用いて、制作されたものもあるようで、それはそれで音楽と音質の関係について考えさせられることだと思います。今の安インターフェイスも質いいっすからね。音質が全てではないと。


個人的に好きなジョン・フルシアンテによるレッチリ復帰後初の音源は、正にMDによるMTRによるもので、リズムマシンはElektronによるMaschin Drumだったりと、2000年代初頭の音です。

このアルバムは好きなんですけど、今となってはいい音で聴きたいなぁというのが本音です。

で、ジョン自身もここ数年の自分の作品は、コンピュータを使いつつもアナログ機材で録っているみたいですね。



いい時代だけど、把握するのは大変!まとめ!

自分の考えとしては、その気になれば下手なプロよりもいい音で、音源を作ることが出来得る時代になったこと自体はいいことだと思います。そういう意味では、趣味としての"DTM"は死んだ、かと。


しかし、現実にはコンピュータを使いこなす、DAWやプラグインなどのソフトを使いこなすには、それなりの知識であったり、修練が必要ではあるわけです。情報も溢れかえっていますし、趣味としては、やはり苦痛なものになってしまうのかもしれません。


なので、まとめてみるとDTMが死んだというよりは、技術が発展、完成されしすぎてしまって、逆にワクワク感がなくなってしまったこと。あるいは情報が増えすぎて億劫になってしまったことなんかが原因としてあるのではないかと思います。


今となっては普通にWebブラウジングしたり、ネット通販したり、動画をしたりするのに、わざわざパソコンを使う必要も、持つ必要もなくなってしまいました。最近の十代はパソコン使えない、とかも聞きますね。一般生活においては全部、スマホかタブレットで十分だからしょうがないんですが。

でも、それなりの性能のパソコンを持っていれば、いろいろ広がると思うんですよね。


なんで、ミウラ義幸またの名をmiur-usの活動目標としては、

そうした情報の海に振り回されることのないように、有益でリアルな情報をピックアップして、かつわかりやすい形で、提示できたらと思います!よろしくお願いします!!



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